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おさじの処方箋

第8回
しっとりふっくら美肌への道
キメ密度を上げるための具体策

乱れたキメの改善には、水分を角質細胞の中に届けてふっくらさせ、その水分が逃げないよう油分などでフタをしてあげることが大切、というお話しをさせて頂いた前回のコラム。実のところ、「油分などでフタをしてあげる」については、キメの整った健康な肌であれば不要、といっても過言ではありません。というのも、肌にはもともと細胞間脂質という水分を逃がさないための油分をつくり出す力が備わっているからです。

それでもキメの乱れが起こるということは、紫外線のダメージや急激な湿度の低下、もしくはインナーの問題(食生活の乱れによる栄養不足)など、さまざまな要因によって細胞間脂質をつくりだす力が弱っているサインということになります。油分でフタをするというのは、与えた水分を逃がさないための基本ケアですが、あくまでも細胞間脂質の減少を補う対症療法的なケアです。整ったキメへの改善には、細胞間脂質をつくりだす力を高める根治療法的なケアが必要になります。

今回は、キメが水分を抱え込んでふっくらとして、なおかつキメとキメの間が細胞間脂質でしっかりと満たされた、キメ密度の高い美肌をつくる保湿の仕方について、ーよくある質問ーにお答えしながら解説していきます。


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ー化粧水の後にオイルをつけるとキメは改善される?

自然派スキンケアを好む方は、肌にやさしいイメージのあるオーガニックの植物オイルなどを化粧水の後に使うことも多いと思います。確かに油分は肌の上に膜を張って水分の蒸発を防ぐ役割がありますが、植物オイルの中にはフタの役割として不安なものもあります。

というのも、スクワランやアルガンオイルといった油分は、角質層に浸透することで、むしろ自然な細胞間脂質の働きを損なう可能性があるということが、論文報告などからわかっています。オイルが浸透すると保湿効果が高まっていると捉えたくなりますが、実際の細胞間脂質はセラミドと水分がミルフィーユ状になったラメラ構造という構造を成しています。そして先ほどあげたような一部のオイルについては、浸透するほどにラメラ構造のバランスが崩れてしまうリスクがあるのです。

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ー水分の蒸発を防ぐ油分として低刺激で安心なのは?

低刺激でフタの役割をしっかり果たす油分であれば、皮膚科などで使用されるワセリンがもっとも安心な保湿剤です。しかし、ワセリンを塗ることもまた対症療法的なケアです。細胞間脂質のラメラ構造のバランスを崩さず、なおかつ細胞間脂質の合成が促されるような改善を期待するのであれば、おすすめはヒアルロン酸などに代表される高分子のゲル系の成分。中でも、近年では「リピジュア」といった成分に注目が高まっています。

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「リピジュア」は、人間の細胞膜や涙にも含まれる成分であるリン脂質をモデルとして、人工血管の表面処理剤として開発されたもの。コンタクトレンズなど粘膜に触れる部分にも使われている生体親和性の高い素材です。細胞間脂質のラメラ構造のバランスを崩すことなく、ヒアルロン酸の約2倍といわれる保水力を発揮してくれます。

ーアトピー素因肌の保湿にはセラミドが良いと聞いて...。

セラミドは、細胞間脂質を構成する主成分であることは確かなのですが、実際のところ人間の肌の細胞間脂質の中のセラミド比というのは、30%以上といわれています。それに対して、セラミド配合の化粧品のセラミドの配合量というのは、大抵1%にも満たないことがほとんどです。そのため、セラミド配合の化粧品を使うこともまた対症療法的なケアであり、細胞間脂質の働きのごく一部を助けているというレベルです。

セラミドや、細胞間脂質を構成しているコレステロールなどを肌に塗ることで細胞間脂質の合成が促された、という試験結果や論文はあるのですが、残念ながら現代の皮膚科学ではまだ細胞間脂質を完璧に再現することに誰も成功していません。なので、セラミドを塗ることで完全に細胞間脂質が補完されるわけではないということ、セラミド配合が最も良いとは言い切れないのが実情です。

ースキンケアで細胞間脂質の合成を高められる?

マウスを使った臨床実験ではありますが、マグネシウム欠乏状態になったマウスは、細胞間脂質が合成されなくなり、皮膚にアトピー傾向が発生することがわかってきています。マグネシウムは食事からも摂取できますが、皮膚からの摂取も有効で、エプソムソルトやにがりを入浴の際に湯船に入れる、マグネシウム配合の化粧水などを使うことで細胞間脂質の合成を促すことが可能です。また、細胞間脂質をつくる材料の1つであるコレステロールをリポソームに注入して配合した美容液などを塗ることも、細胞間脂質の合成が高めてくれるという論文報告があります。

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そしてもう1つお伝えしておきたいのは、洗いすぎによる細胞間脂質のロスを防ぐことも大切です。洗浄力の強い洗顔料を使ったり、体温以上の熱めのお湯ですすぐと、キメの間から細胞間脂質が流出しやすくなります。落とすケアという意味では、角質ケアも基本的におすすめできません。細胞間脂質は、細胞の中に脂を作って蓄え、ある一定時間の中で徐々に放出されてつくられます。角質ケアなどでターンオーバーを早めてしまうと、角質層の機能のひとつである細胞間脂質の合成が妨げられるリスクが高まります。

キメの粗さや乾燥によるくすみ感をなんとかしようと、自己判断でピーリングなどをすると肌はつっぱりやすくなり、乾燥が進行してしまいます。おうちで行う基本のスキンケアは、まず不要な汚れのみを落とす適切な洗顔と、正常なターンオーバーを促す根治療法的な保湿を心がけてくださいね。


茂田正和
1978年11月生まれ / 所属団体:日本皮膚科学会所属、 日本皮膚免疫アレルギー学会、 日本化粧品技術者会所属、 日本香粧品学会所属、 こどもを紫外線から守る会主宰、 バランスケアアソシエーション主宰 / 執筆実績:リンネル(宝島社)、 大人のおしゃれ手帳(宝島社)、 momo(マイルスタッフ)、 スキンケア大学(リッチメディア)、 フレグランスジャーナル(フレグランスジャーナル社)

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おさじの処方箋
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