OSAJIディレクター茂田正和と、企業のメニュー考案なども手がける人気フードコーディネーター米田牧子さんの対話でお届けする料理のインスピレーション。今回のテーマは、“捨てない”です。出汁をとった後の昆布、野菜の皮や切りクズなど、まだまだ旨みが残っている部分を捨てることなく使い切れば、もう1つ美味しい1品が誕生します。
茂田
“捨てない”を考えることって、かなり楽しいんですよね。僕は普段から、魚を捌いたあとのアラはもちろん捨てないで冷凍庫にストック。お家でラーメンを食べたくなった時とか、そのアラで出汁をとって鶏皮でちょっと油を加えてスープを作れば最高です。
米田
美味しそう(笑)。私は今回、野菜の皮をメインにベジブロスを取ったのですが、果物の皮とかも捨てないで、なにかに活用できるかな? と一旦は必ず考えます。りんごの皮は普通に野菜の皮と一緒にベジブロスとして使いますし、むくみケアにも良いスイカとかは、皮の部分をキンピラにすると美味しいんです。
茂田
米田さんがいまおっしゃったようなアプローチで、海外には賞味期限切れの野菜を活用するレストランもあるんですよね。骨や皮などのアラ、出汁がら、切り落とした皮などをゴミと捉えない、ちょっとした制約を設けて視点を変えるとクリエイティブなアイディアに繋がりますよね。
米田
わかります。お店の厨房に日々立っていた頃は、余ってしまった野菜の端っこも細かく刻んでよくミネストローネに生まれ変わらせていました。
茂田
今回、僕が作ったのは出汁をとった後の昆布の佃煮でしたが、米田さんは出汁がらの昆布をどんな風に再活用してますか?
米田
私も茂田さんと同じで佃煮にすることは多いですよ。どこの昆布がおすすめ、というのは特にないのですが、佃煮にするなら肉厚なものがおすすめです。出汁がら昆布を正方形に切ったら、あとは調味料を入れて圧力鍋で煮ればすぐ柔らかな佃煮ができます。それから、刻んだ昆布をなめ茸と合わせた「なめ茸昆布」もよく作りますね。土鍋ご飯の味変として添えると小さいお子さんからお年寄りの方まで喜んでくれます。
茂田
いいですね。そう、立派な昆布は値段が高いと感じる方もいるかもしれないけれど、良い出汁が取れるし、佃煮にした時へなっとならず、旨みしっかり、食べ応えのあるおかずになる。今回のようにスパイスを利かせたり、お家での晩酌のお供にもぴったりなので、どうか捨てずにもう1品作っちゃいましょう。
by 茂田正和
深さのあるフライパンか鍋にオリーブオイルを入れ、ごく弱火の低温で数分間炒めてホールのクミンシードの香りを出す。
千切りした生姜(最後にのせるひとつまみは残しておく)、刻んだ⻘唐辛子、昆布の順に加えて火を通したら、みりん(昆布の量の約半分)、醤油(みりんの量の約半分)をお好みでクミンパウダー(小さじ1前後)を合わせる。
落とし蓋をして昆布が柔らかくなるまで弱火で煮つめ、汁気が飛んだところで火を止めてしっかり冷ます。器に盛りつけたら、残しておいた生姜をのせ、ごまを振りかけて完成。
⻘唐辛子のピリッとした刺激とクミンのエスニックな香りがやみつきになる佃煮は、茂田家の晩酌タイムのおつまみの中でも人気の1品です。ご飯のお供にする時は味を濃いめに、お酒のアテにするなら味をやや薄めに仕上げると良いと思います。人参やひき肉も加えてお弁当のおかずにするのもおすすめですよ。
by 米田牧子さん
料理の際に出た野菜の皮や切りクズ(4〜5種類)を大きめの鍋に入れ、たっぷりの水を入れて火にかける。沸騰したら弱火にして20分程度煮込み、火を止めてざるなどで漉すとベジブロスが完成。
玉ねぎを薄く切り、鍋にオリーブオイルをひいて塩をひとつまみ入れてしっかり炒める。かぼちゃは皮を剥いて火が通りやすい大きさに切り、玉ねぎと合わせて炒める。
炒めているかぼちゃの角が透明になってきたら、ベジブロスを注いでローリエを1枚入れて沸騰させない程度の火力で加熱。
かぼちゃが柔らかくなったらローレルを取り出し、ミキサーにかける。なめらかなペースト状になったら鍋に戻してベジブロスの1/3量の豆乳を加えて弱火で温める。豆乳は火にかける時間が⻑くなると分離してしまうので、時間はできるだけ短めに。
器に注いでから、リコッタチーズを小さじ1杯トッピングして、イタリアンパセリをあしらって完成。
野菜の皮は、時間が経って水が滲んだものは使わないようにしましょう。秋の旬、かぼちゃは美肌づくりに役立つβ−カロチンがたっぷり。ベジブロスでスープにすると味わいに奥行きが出るので、塩は少なめでOK。豆乳を加える前のペースト状態で冷凍しておくと、そこからほかのお料理にも活用できて便利です。