より肌へのやさしさと効果を両立できるようなアイテムを生み出すべく、茂田は開発者として歩み始めた当初から、現在も皮膚科学会や皮膚免疫アレルギー学会、香粧品学会などに入って学び続けています。というのも、OSAJIが誕生する2017年までに、1970年代の黒皮病の時のように社会的ニュースとなる化粧品成分での肌トラブル問題が2度起こりました。2010年の、小麦加水分解物を含有する石鹸を使ったことで、口から摂取する小麦に対してもアレルギーを発症するようになってしまったケース。次は2013年で、一度は医薬部外品として承認された有効成分が配合された美白化粧品によって、肌が斑らに白くなってしまう白斑症状が出てしまったケース。それらは世界中の化粧品開発者にとって大きな衝撃であり、あらためて肌に備わる機能について見つめ直す機会でした。
また海外においても、2015年にアメリカのアレルギー学会でロンドン大学のギデオン・ラック教授が発表した内容は、化粧品開発において見逃せないものでした。それは、「離乳期からピーナッツバターを含んだおやつをたくさん食べているイスラエルの子供より、ピーナッツを使用した食品を避ける傾向にあるイギリスの子供のほうが、なぜかピーナッツアレルギーに罹患している割合が10倍も高い」というものです。これはどういうことかというと、イギリスでは子供のスキンケアでピーナッツオイル配合のベビークリームが定番的に使われてきたことが、ピーナッツアレルギーを誘発しているという示唆です。ギデオン・ラック教授は、日本でほんの数年前に起こった、小麦加水分解物を含有する石鹸の使用が口から摂取する小麦でもアレルギーを招いたケースと同じプロセスをたどった臨床データを、90年代から記録していました。その内容は、皮膚に卵を塗ってアレルギーを起こしたマウスが、後から卵を口から摂取した際にもアレルギーを起こした、というものです。
アレルギー学会で発表される臨床データをキャッチアップすることで、巷では万能のようにもてはやされていた栄養豊かなスーパーフードなどにしても、内臓の酵素では処理できていても、皮膚の酵素は全く違うので同じように処理できるわけではない、ということを冷静に把握できました。皮膚科学の基本に沿ってスキンケアを捉えること、アレルギーが起こる経路について常に追いかけることは、本当の意味での肌にやさしい製品開発につながります。そしてアレルギーが起こりにくい肌とは、ターンオーバーが健やかでキメ密度の高い、角層のバリア機能が正常に働いている肌と疑いなくイコールです。物理的な刺激によってダメージを受けにくく、アレルギーの原因物質が侵入しにくい肌は、簡単に炎症がひどくなることはありません。また、皮膚科学の基本を開発の柱とし、化粧品成分による肌トラブル問題を反面教師として、さらに確実性の高いスキンケア理論を構築していくにあたり、茂田は美白製品に関しても疑念を抱いていました。角層のバリア機能を突破するほどの浸透力で、本来は紫外線から肌を守るためにつくられるメラニン色素を止める作用を持たせることは「自然の摂理に反しているのではないだろうか?」。そのような想いから、自身の開発では一貫して紫外線対策に力を入れてきました。
紫外線のダメージによって、もっとも大切な皮膚のDNAが傷つかないようメラノサイトへ指示を出しメラニンを送り出すのも、活性酸素による酸化ダメージによって起こるコラーゲンの分解や再生も、表面の古い角質を垢として排出しターンオーバーを進めるのも、すべて角層に備わっている優れた機能です。そのような体にもともと備わっている機能に成分で介入する化粧品を使い続けると、角層が持つ本来の働きを阻害してしまう可能性があります。そして肌に炎症が起こった時には、それを修復するよりも壊れるスピードのほうが早くなっていくのです。“角層が健やかな状態であることが、すべての源”。この結論を体現すべく誕生したのが、低アレルギー処方にこだわったOSAJIの“角層美容”です。十数年に渡って皮膚科学と皮膚が接する環境の変化について掘り下げていくうちに、角層の優れた機能を示すエビデンスや臨床データはより信憑性の高いものが増え、ブランド誕生の時点でその根幹は確固たるものとなっていました。
2000年代に入ったあたりから、「自分の肌は敏感肌だと思う」という自称敏感肌の人がぐんと増えました。これは昔と比べ、じわじわと浸透し肌にダメージを与える紫外線の量が増えたこと、皮膚や粘膜の健康にとって重要な野菜や果物のビタミンやミネラルの含有量が減ったこと、エアコンの普及が当たり前となったことなど、環境の変化が大いに関係しています。はっきりとアトピー性皮膚炎のような症状が出るわけではないけれど、肌の調子が不安定になりやすい現代女性の肌は、常にアレルギー反応のリスクと隣合わせです。そういった意味では、精油も含めた天然の植物エキスの世界はミクロの化学成分が複雑に絡み合っているため、肌にトラブルが出た場合にどの化学成分が合わなかったかの特定が非常に困難です。これは、肌にやさしいと捉えられる自然派やオーガニックの化粧品の落とし穴ともいえます。一方で、化学合成成分というのは単一成分のため、実は敏感肌の人が合わない成分を避けたい場合にとてもわかりやすい、というメリットがあります。
OSAJIでは、天然植物成分VS石油由来成分のような極端な捉え方をせず、アレルギーリスクの観点からもう少し繊細に成分を選定しています。植物成分を使用する場合には、アレルギー抗原となりうる蛋白質を含まないよう配慮。精油など濃縮された成分については、安全な許容濃度を厳しく定めています。植物成分とは、物理的なプロセス(圧搾や抽出など)で取り出したものなので、アレルギー抗原となりうる蛋白質を含んだままであることが多いです。一方で、植物由来成分は、化学的なプロセス(合成、分解、バイオ的アプローチなど)で取り出されるのでアレルギー抗原となりうる蛋白質は取り除かれています。石油由来成分は、石油から化学的なプロセス(合成や分解など)で取り出したものであり、そのほかにも化粧品に使われる成分には、動物由来のものや鉱物などがあります。OSAJIは、アレルギーリスクのある成分を極力使わずに(生体親和性の高い成分を採用して)作ることにこだわっています。そのため、いちばん重視している成分は何かというと、植物の良さとアレルギーリスクの少なさを兼ね備えた植物由来成分です。石油由来成分は可能な限り最小限に留めています。植物成分についてはアレルギーリスクが比較的高いこともあり、どこまで安全性を確保できるかを慎重に判断してから使用しています。