健やかで美しい皮膚を保つためのスキンケアライフスタイルを提案していくにあたり、やはり日常を心豊かに過ごすためには、メイクアップの存在も無視できません。OSAJIの“角層美容”に支持が集まり、リピーターが増えるにつれて要望が高まっていたメイクアップラインは、2019年に満を持してスタートしました。そこには、「OSAJIはつねに肌の弱い人が安心して使えるブランドでありたい。だからといって、メイクアップの色や質感を“身だしなみを整えるのに役立つ”範囲に留めてしまうのは寂しい」という茂田の想いがありました。近年、オーガニックコスメやミネラルメイクアップのブランドからはトレンドに即した色や質感のアイテムが多数登場するようになりました。しかし、「“植物=安全ではない”というアレルギーリスクの視点を持ちながら、メイクアップのトレンドをマークしているブランドは見当たらない…」。そう感じていた茂田は、肌へのやさしさはこれまでどおり諦めず、それでいて琴線に触れるような色や質感で自己表現の可能性を拡げるという、メイクアップの本質を追求したいと考えました。そこで、数々の化粧品ブランドで企画から携わった経験を持ち、女性誌などでビューティライターとして活躍するAYANA氏をメイクアップコレクションのディレクターに抜擢。
現在にいたるまで、シーズンごとのメイクアップコレクションにおいて、アイテムの剤型、色みや質感の選定、ネーミングなど、使う人が幸せな気持ちになるようなトレンド性のディレクションはAYANA氏が担当。茂田は、自身の専門領域である科学・疫学をベースに美的感性を重視したものづくり、具体的には成分の安全性や快適な使用感など、OSAJI独自の「安心・安全に使える」こだわりの部分を担っています。全てのアイテムに、肌と同様のラメラ構造を形成するアミノ酸系の植物由来保湿成分を配合し、メイクアップをしている日中も肌のうるおいをキープ。アイカラーやチークカラーは、顔料が肌に直に触れないよう全てコーティングしてアレルギーのリスクを払拭しています(リップスティックはワックス系の油分の配合によって顔料が唇に触れにくくなっています)。色や質感の追求と肌へのやさしさの両立は時に困難を極めることもありますが、OSAJIのメイクアップアイテムの使命は、個性を覆い隠すのではなく、魅力に変えることです。
このメイクアップラインの誕生と時を同じくして、茂田は化粧療法の世界と出会いました。化粧療法とは、スキンケアやメイクアップなど化粧品との触れ合いによって、心身の機能やQOL(Quality of Life=生活の質)を維持向上、健康や長寿に寄与するセラピーです。例えば一本のリップスティックを塗るという刺激は、高齢者であれば認知症の予防に役立つことがわかっています。そのほか障がいを持つ方にとっても、メイクアップは心にハリをもたらし生活を明るく照らすツールです。茂田は化粧品開発者の立場から、視力を失った視覚障がい者のために生み出され、鏡を使わず指先のみでメイクをする「ブラインドメイク」という技法の普及にも携わっています。その経験を通じて、メイクアップの精神作用の大きさをより痛感。「メイクアップは、ファッションとして楽しむと同時に社会的意義をも持つ。だからこそ、身だしなみを越えてその人のキラキラとした個性を輝かせるものづくりをしたい」という意思を強めることになりました。
また、現在地点のOSAJIが、スキンケア、メイクアップと同じくらい大切にしているカテゴリがフレグランスです。初のフレグランス登場は、2020年秋。折しもコロナ禍となり、ステイホームの余波として、人と香りの関係性がこれからもっと深くなっていくことを予見した時期でもありました。もともと、スキンケアのためのホリスティックな作用として香りを捉えていた茂田は、ローズマリーの精油が持つ認知症予防の作用や、ローズの精油による女性ホルモン分泌を促す作用など、香り成分のエビデンシャルな裏付けに注目していました。ただそれだけでなく、安全に使える量をきちんと配慮すれば、さまざまなシーンで目を見張る力を発揮してくれる、精油の多面的な働きにも魅せられてもいました。自身でも日々香りをまとう楽しみが増し、フレグランスが持つ二面性にフォーカスして開発やディレクションを行っています。ひとつは、森林浴などをした時に樹木が発する香気成分(フィトンチッド)によって自律神経の乱れが整うといった、これまでも注目してきたフィジカルに働く側面。実際、茂田は週末にホームタウンである群馬に戻る度に、すぐ近くにある雄大な自然に触れると心身がリセットされるのを実感しています。もうひとつは、仕事でクリエイティビティを発揮したい時や、その日に会う人に合わせた空気感の演出などメンタルに働く側面です。精油だけでなく、香料というものについて勉強すればするほど、フレグランスはその人のアイデンティティの一部になりうる、重要なものと感じています。
調香の世界には、ヨーロッパのように職人技を持ったパフューマーが伝統的手法で工芸品を作るかのような趣がある一方で、人が本能的に求める香りを抽象的に描くようなモダンな流れも認知されてきています。OSAJIが第1弾として発売したオードトワレは、どちらかというと後者に属します。懐かしい記憶や感情、情景を思い起こさせるような、日本の暮らしとなじみの深い花々の香り。植物由来のエタノールをベースに、フレグランスが得意でない人でも日常的に心地よく使えるようにしました。そして、2021年春に登場した第2弾は、ジェンダーレスに使える樹木の香り。混沌した時間空間の中で、自分の中庸を見つけ、落ち着きを取り戻させてくれるような香調です。技術躍進が優先されることで、手仕事による文化の密度が薄くなっているように感じる今、人の本能を刺激する香りの存在は、文化のエモーショナルな部分を担う大切な要素のひとつ。温もりある文化を大切にするOSAJIが打ち出すフレグランスは、時代の潮流とともに今後ますます深化していきます。