これまで当たり前とされてきた価値観が、劇的に変わりつつある2022年。経済という部分だけを見て豊かさを追求することは限界を迎えており、フィンランドをはじめ北欧の国々がいちはやく着手してきたような、人と地球の関わり全体を見つめた豊かさの捉え方が私たちには必要になっています。このパラダイムシフトの経験を糧に、OSAJIディレクターとして茂田が思い描いているのは「食の世界で注目を集めるローカル・ガストロノミーの考え方を、化粧品の世界へ持ち込む」という構想です。ローカル・ガストロノミーとは、その地域の風土や歴史、文化を料理(食材使いや調理技法)によって表すこと。“地産地消”をさらに掘り下げた、農林漁業の営みや加工業と連携をはかり、地域経済の持続的な維持を見据えた仕組みづくりまでがテーマとされています。
ニッチの極みともいえる食の在り方が登場したことに興味を持つ茂田は、(今は潜在的で顕在化していないものの)化粧品の選ばれ方にも新たな可能性を見出しています。ローカル・ガストロノミーの考え方を、化粧品の世界でのものづくりに当てはめてみれば、そこには人が暮らす地域の健やかさまで配慮した究極のホリスティックが成立します。自分が生まれ育った土地の原料を使った化粧品でスキンケアをする、香りを楽しむ、洗ったり整えたりなど暮らしまわりのあらゆることに活用する。流行に合わせた化粧品を選んで無理して使うのではなく、自分のライフスタイルにすっとなじむ化粧品を選ぶ時代へ。つくり手サイドにおいても、大量生産を優先するために調達難な原料を無理して使わないようにする意識の変化が一部でもう始まっています。例えば、今年豊富に収穫できた原料ありきで、クリエイトしてみる。先につくりたいメニューを決めて食材を探すのではなく、その日に採れた活きの良い食材で美味しいひと皿に仕上げる名シェフのように。原料面での制約をポジティブに変換した創造的な化粧品づくりに向けて、小ロットでの生産を前提に自社の畑を持つべくOSAJIは動きだしています。原料の栽培から、精油の蒸留、製造までを手がけて国内自給率を上げることは、輸送コストを下げることになり、自ずと環境問題への取り組みに繋がります。もちろん原料は肌にとって本質的に良いものを厳選し、なおかつカーボン・オフセット*2での調達を目指します。
そしてパッケージは、どのような方向性で洗練させていくべきか。これについては、使い捨てではなく手入れをして長く使える素材をパッケージに採用、経年変化による美しさまでも楽しめるようなデザイン性にこだわることを視野にいれています。OSAJIを選んで買い物をしたら心の豊かさが増えて、結果的にエコフレンドリーな行動でもあった、という消費のプロセスが当たり前となるように。そのような環境への配慮と、原点であるアレルギーリスクを防ぐ肌へのやさしさ、いずれにも通ずる信条として、使用成分の数は少なく押さえる努力も忘れません。コロナ禍のマスク生活によって敏感肌人口はいっそう増加、自分と向き合う時間を得たことで、肌にとって本当に必要なものについて考えるようになった全ての方へOSAJIを届けたい。環境の変化や新しい時代のニーズをすばやく反映したものづくりを目指し、手にした方が自己表現の可能性を拡げ、個性を輝かせることのできるブランドで在れるよう、さまざまな挑戦をしていきます。