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釜浅商店
4代目店主 熊澤大介
×
OSAJI ディレクター
茂田正和
釜浅商店 × OSAJI Journal
COLLABORATION ITEM

〈SPECIAL CROSS TALK〉
ヒト・コト・モノ
from OSAJI Journal
2023.02.01
釜や庖丁、南部鉄器をはじめ、さまざまな料理道具を取り扱う合羽橋の老舗である釜浅商店 4代目店主 熊澤さんと、料理好きでレストランのプロデュースも手掛けるOSAJIディレクター 茂田が意気投合。この春、釜浅商店×WEBマガジン OSAJI Journalのコラボレーションで、庖丁を研ぐひとときを香りによって日常の愉しみに変えるアロマウォーター『砥香(とか)』が誕生します。比類なき、料理道具のための香りアイテムが生まれた経緯や、コラボレーションの様子をお届けします。
釜浅商店…
「良い道具には良い理(ことわり)がある」。明治41年の創業以来100年以上、この信念のもと、料理人や道具と真摯に向き合う料理道具専門店。日本各地の職人の元に出向き、選びぬかれた「良理道具」たちと、それを求めるお客様との出会いを日々紡いでいる。

熊澤 そうなんです。和庖丁とともに、“庖丁研ぎ”にも再注目してもらいたくて。庖丁を研ぐ時間って無になれるというか、自分と向き合う心地よさがあると思うんです。庖丁研ぎの時間にふさわしい香りを、茂田さんとコラボしてみたいですね。
茂田 いいですね!確かに庖丁を研いでいるとゾーンに入るような、自律神経が整う感じがあります。集中力を高めるベチバーあたりを使うといいかも。

COLLABORATION ITEM
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釜浅商店 砥香

各20mL / ¥3,520(税込) 全2種
東雲 ~Shinonome~ / 十六夜 ~Izayoi~

和庖丁の価値をあらためて掘り起こす。
庖丁を研ぐ際に砥石に香付けをする
アロマウォーター。

〈STEP〉
商品の詳細はこちら
庖丁を研ぐという行為を、
香りによって日常の愉しみに
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茂田 今回の釜浅商店×OSAJI Journalコラボレーションは、昨年の対談がきっかけでした。お話する中で、釜浅商店では最近“和庖丁の価値をあらためて掘り起こす”という取り組みに力を入れていると聞いて、偶然にも僕がコロナ禍に“庖丁研ぎ”を日課とするようになっていたこともあり、お話が一気に盛り上がりましたよね。

熊澤 そうですね。“共に生きる庖丁”をコンセプトに、さまざまな角度から和庖丁の価値を掘り起こしてます。料理道具の魅力を伝えるにあたり、道具のお手入れは欠かせない要素ですが、庖丁についてはハードルが高いと感じる人が多いようで。庖丁研ぎの時間がもっと楽しく豊かな時間になったらいいな、と。もちろん音楽をかける、あえて静けさを楽しむなど、自分なりのアプローチが確立している方もいるとは思うのですが、釜浅商店からはあえて香りの提案をしてみたいと思って。

茂田 僕の場合は、静けさを楽しむ派かもしれない。庖丁を研ぐ時間って、自分にとってメディテーション習慣のようなものなんです。指先で刃先を感じていると思考がすっと整理される瞬間があって。なので、熊澤さんから「庖丁研ぎにふさわしい香りとか、つくってみたいですね」という言葉が出た瞬間、確かに香りの力があれば、あの時間をよりエモーショナルなものにできるとピンときて。

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熊澤 うちの阿部さん(庖丁売場マネージャー)も、以前から研ぐ時の「シュッ、シュッ」という音の心地よさで耳から自分の世界に入れると言っていて。そこに香りの要素が加われば、研ぎ方の技術がどうとか、これまでの苦行のようなイメージから離れて、「研ぐ」行為そのものをもっと身近に感じてもらえるかと。

茂田 わかります。苦行とかでなく、家事の延長線上にあるささやかな儀式というか、一日の始まりや終わりに神棚に手を合わせる所作のような感覚で捉えてもらえたら嬉しいですよね。

料理との親和性を考えて、
2パターンの香りを制作

熊澤 先日の茂田さんとのミーティングで香りの基本構造*についてレクチャーしてもらって。お預かりしたトップ、ミドル、ベースそれぞれのノートに属する精油を、スタッフ各々が“心地よさ”を基準に選びました。同時に、「料理の食材として使われている香りを入れて親しみのあるものにしたいね」とか、和庖丁の柄の部分に使われる朴の木(ホオノキ)の精油もお預かりした中にあったので、「これは売り場でも説明していたし、ぜひ入れよう」といった話も出ました。

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茂田 了解しました。そういったみなさんの香りのセレクトの軸、理想の仕上がりに添いながら、今日は調整をかけて具体的なブレンドの割合を決めていきましょう。みなさんの意見がまとまったのは、山椒がキーとなる香り〈東雲 ~Shinonome~〉と、黒文字がキーとなる香り〈十六夜 ~Izayoi~〉2パターンということでいいですか。

熊澤 はい。黒文字がキーとなる香り〈十六夜 ~Izayoi~〉には柚子の精油も入れたいと思いました。そうすると、2パターンとも食品として有名な香りが入り、みなさんが手に取りやすいものになるのではないかと。また、どちらもベースには檜(ヒノキ)と朴の木(ホオノキ)の精油を。檜(ヒノキ)はまな板の素材としてよく使われる素材で、朴の木(ホオノキ)と同じように庖丁と縁が深いので。

茂田 釜浅商店らしくていいですね。山椒がキーとなる香り〈東雲 ~Shinonome~〉は、どうしても山椒がキーンと主張しがちなので、酢橘(スダチ)や檜葉(ヒバ)を加えて少し整えてみましょうか。黒文字がキーとなる香り〈十六夜 ~Izayoi~〉の方も、トップの柚子が際立ちやすいので、ベースノートの精油の比率を変えて少しまろやかに。どうでしょう?

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熊澤 あ、山椒のスパイシーさがほどよく和らいでいい感じです。森っぽさもぐっと高まってかっこいい。黒文字がキーとなる香り〈十六夜 ~Izayoi~〉の方は、また全然違った印象ですね。穏やかで女性的な香りというか。こちらは、自分達で香りを合わせたときは、朴の木の存在感が薄くなってしまって。

茂田 1滴でも変わりますよね。朴の木は、ベースの香りではあるのですが、わりと軽やかに香るので埋もれやすいんです。朴の木に含まれている成分と同じ成分を含む、杉を隠し味的に足してみると、朴の木がちゃんと香ってくるはずです。僕としては、ベチバーも加えると高級感のある香りになっておすすめです。

熊澤 本当だ、よくわかります!これくらい複雑さがあってもいいかもです。こういう風に香り立ちをコントロールするんですね。朴の木の精油は、お出汁みたいで強くはないけれどクセになる香り。お料理中に香っても、すぐ調和してサッと抜けていってくれるような。キッチンに馴染みそうです。

茂田 では、山椒がキーとなる香り〈東雲 ~Shinonome~〉は、山椒/酢橘/檜/檜葉/朴の木で。黒文字がキーとなる香り〈十六夜 ~Izayoi~〉は、黒文字/朴の木/柚子/檜/杉/ベチバー、これで決定してラボに詳細な比率を出してもらいましょう。

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香りが決定、庖丁研ぎ用の
アロマウォーターを試作実践
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熊澤 料理を感じさせる香りのブレンド精油の完成、とても嬉しいです。この香りに基づいて、庖丁研ぎ用のアロマウォーター『砥香』ができるということですよね。

茂田 そうですね、その方が使いやすいかと。できれば、手元と顔の距離感でほのかに香って欲しいですよね。香りの賦香率(濃度)は調整可能なので、アルコールを配合した試作品をつくって実践してみましょう。

熊澤 一般的には、布巾の上に台を置いてその上に砥石をセットして、という感じになると思うのですが、台の長さなどに合うキッチン桶を用意できると、より香りが楽しめそうです。桶に水を張ってその上に台と砥石をセットすることで、研いでいるときに滴り落ちた研ぎアロマウォーター『砥香』から、またふわっと香りが広がります。 

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茂田 香りがふわっと下から柔らかく立ち上るって、いいですね。まずは、香りたちがまろやかな黒文字がキーとなる香り〈十六夜 ~Izayoi~〉で研いでみましょうか。

熊澤 いつも庖丁を研いでいるときに感じる鉄臭さが明らかに軽減されています。黒文字、柚子、朴の木などが柔らかくやさしく香ってくる。それでいて、そのものには香りが移っていないです。

茂田 賦香率は、これくらいでちょうどよさそうですね。

熊澤 そう思います。食材や料理道具との相性を考えた香りとはいえ、あまり強すぎても、と思っていたので。この庖丁研ぎ用アロマウォーター『砥香』を使って定期的に研いでいくと、おそらく砥石がだんだんいい香りになっていくので、片付けてからも楽しめそうです。

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茂田 砥石がアロマストーンになっていく感じですね。次は、山椒がキーとなる香り〈東雲 ~Shinonome~〉も試してみましょう。

熊澤 こちらは、かっこいい雰囲気をイメージしただけあって、頭の中がクリアになるような香り立ち。この覚醒感も、また違ったよさがあって好きです。 

茂田 こちらが“集中”なら、先ほどの黒文字がキーとなる香り〈十六夜 ~Izayoi~〉は“瞑想”ですよね。逆のベクトルのムードになりましたが、庖丁研ぎとの向き合い方としてどうですか?

熊澤 もともとは、リラックスできる香りを2種類くらいつくってみたいな、ということで精油のセレクトに着手しましたが、いろいろなアイデアが取り込まれ、結果的には心が静かになっていく月のような香りと、気分が目覚めて昇っていく太陽のような香りになってよかったと思います!

茂田 配合精油それぞれの効能というのもありますが、心身のバイオリズムに合わせて2つの香りを使いわけたり、ときには少しずつ混ぜてみても面白そうです。

熊澤 そうですね。何本か庖丁を持っているなら、朝に研ぐときは山椒がキーとなる香り〈東雲 ~Shinonome~〉。夜に研ぐときは、黒文字がキーとなる香り〈十六夜 ~Izayoi~〉と、時間帯での使い分けもできます。

庖丁の世界に、気軽に一歩
踏み込んでもらいたいという想い

茂田 キッチン桶を使わず、机の上などに布巾と砥石をセットして研ぐときや、もっと香りに包まれて研ぎたいときは、香りを落としたアロマストーンを傍らに置いてもいいですよね。香りに興味があるけど、研ぎ方に自信がないという方は、釜浅商店の庖丁研ぎ教室をおすすめしたいですね。どれくらいの頻度で行っているのですか?

熊澤 砥ぎ教室は毎月開催して、1回につき定員5名なのであっという間に埋まってしまうのですが、今後は頻度をあげていきたいと思っています。内容も、これまでは本格的かつスパルタな感じでしたが(笑)もっとカジュアルなビギナー向け教室も考えています。基本的な庖丁の話、どんな種類の庖丁をどんな時に使うといいかとか。

茂田 リアルな体験を通して料理や料理器具について学ぶことって、大人だけでなく子供にとっても、自分を幸せにするスキルが身につく素晴らしい機会ですよね。

熊澤 そうなんです。ただ庖丁の世界は少し特殊というか、どうも「知らないと笑われる」みたいな堅苦しさがあって。そもそも生活の道具なのだから、正しくなくとも自由に使って欲しい。とはいえ、いい道具を使った方が確実に料理はおいしくなり、そうすると自信もつくし、生活がいっそう楽しく豊かになるから、お手入れの仕方は併せてお伝えしたくて。

茂田 今回の『砥香』の発売で、そのお手伝いができてとても光栄です。釜浅商店さんの“庖丁を研ぐひとときを、心をととのえる贅沢な時間に”という想いを感じながら、僕もこれで自分の庖丁をお手入れしていきます。

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*香りの基本構造について

精油も含め、すべての香料素材は香りの揮発速度に基づきトップ、ミドル、ベースと3つのノートに分類されます。揮発速度の早いトップに属するのは、柑橘類やミント、レモングラスなどのハーブ。揮発速度が中程度のミドルに属するのは、花やハーブ、樹木、スパイスなど。揮発速度が遅いベースに属するのは、樹木や樹脂、根、スパイス、エキゾチック系のハーブや花の一部です。トップは香りの第一印象に大きく影響しますが消えるのも早く、香りの軸となるのは後から香るミドルで、じんわりと香るベースは安定感と持続力を担います。

COLLABORATION ITEM
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釜浅商店 砥香

各20mL / ¥3,520(税込) 全2種
東雲 ~Shinonome~ / 十六夜 ~Izayoi~

和庖丁の価値をあらためて掘り起こす。
庖丁を研ぐ際に砥石に香付けをする
アロマウォーター。

-music by 沖野俊太郎-
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profile

90年代初頭、当時渋谷系の代表格であったバンド”Venus Peter”(ヴィーナス・ペーター) のヴォーカリストとしてデビュー。バンド解散後は他アーティストや企業などへの楽曲提供、TVアニメ「Last Exile」の主題歌等、その表現方法は多岐に渡りながらもマイペースに活動を続けていたが2015年、突如15年振りのソロアルバム「F-A-R」を発表しシーンに復帰。最新アルバムは”Soda Water Pool”(2021年)。翌2022年には約40年間に渡り製作し続けたデモやレア楽曲をコンパイルしたCD BOX SET “Lonely Souls”をリリースした。
https://linktr.ee/shuntarookino

music(フルバージョン)はこちら
〈PROFILE〉

釜浅商店 4代目店主 熊澤大介

アンティークショップや家具店勤務などを経て、2004年より釜浅商店の4代目店主に。店のリブランディングを手掛け、創業110年を迎えた2018年には海外初店舗のパリ店をオープン。著書に『釜浅商店の「料理道具」案内』(PHP研究所)がある。

-対談参加メンバー-
釜浅商店
庖丁売場マネージャー 阿部里奈
釜浅商店
広報マネージャー 齋藤あゆみ

OSAJI ディレクター
茂田正和

両親や祖父母に華道家、茶道家、俳人、音楽家を持ち、日本の文化や芸術に親しんできた。無類の料理好きとしても知られ、肌を健やかに導く栄養学も踏まえたアプローチで、料理家とのコラボレーション経験も。

〈釜浅商店〉
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住所:東京都台東区松が谷 2-24-1
営業時間:10:00 〜 17:30
年中無休(年末・年始を除く)
http://www.kama-asa.co.jp
text : Kumiko Ishizuka