Yuki MIKAMIさん
EAU DE PARFUM
“Wild Rose” Collection
オードパルファム
エクスペリエンスセット
(限定版)
「美しさ」の哲学
Yuki MIKAMIさんによって描かれる、黒1色のさまざまな表情の線。のびやかで力強い線もあれば、しなやかで繊細な線もある。ひとつとして同じものは存在せず、そこには作者の体温のようなものが宿っている。作品は、日々どのようにして生み出され、自身にとっての美しさの哲学とは、どんなものなのだろう。
Yuki MIKAMIさん (以下、MIKAMIさん)
描くときは、極力考えないようにしています。こういうふうに描こうっていうのを、なるべく頭の中から排除しているというか。私の場合、先にイメージや制約があると固くなってしまうので、本当になにも考えないほうがいいものができるっていうことに最近気が付いてきて。ただ、描いている中で線の表情やかたち、余白への意識は常に働いていると思います。私にとって美しいと感じる基準は、それぞれのバランスがとれていることなんです。
そういうのって、日常生活の中でも感じることが多いです。たとえば、洗濯物を干すときはグラデーションにして干すのが好きなんです。ブラック、ホワイト、グレー、ベージュといった色が多いので、その中で色のかたまりを整えると気持ちいい。でも、部屋の整理整頓はきっちりしすぎると窮屈なんですよね。全部ピシッと整えるんじゃなくて、適度に。それもやっぱりバランスなのかもしれません。
普段の制作は、ひととおり家事が終わったタイミングで取り掛かるようにしています。時間を決めたり、ルールを決めたりしてやるのは、性格上どうしても向いていないので(笑)。部屋が狭いので、押入れを制作スペースとして活用しています。ふすまを外したらけっこう広くて、作業するのに高さもちょうどよかったんです。
意図しない線
黒いペンを握りしめてカラカラと振り、白い紙に向かって迷うことなく一気に描く。空間にはペンを走らせる音だけが響き渡っている。まるで別の生き物のように動くMIKAMIさんの手から、躍動感のある線たちが生まれていく。机に向かって前かがみになった後姿は、なんだか鬼気迫るものがあった。
MIKAMIさん
なんていうか、“手の記憶”みたいなもので描いているのかもしれません。頭の中を空っぽにして、自分の感情も入れないようにして、“無”に近い状態を保つように意識しています。私の場合、とりあえず手を動かすことから始まるので、てきとうな場所から描き始めて、全体を埋めていくような感じです。かすれた線とかも生かしながら。作品は1発で決まるときもあるし、何回も描いた中からいい線を拾って、コラージュにして制作するパターンもあります。
画材はボールペンとか鉛筆とか、身近にあるものを使っています。今回は『ポスカ』の極太を使って描きました。力加減によってインクの量が変わったり、線の表情も出しやすいので、描いていてもおもしろいなと思って。描くときの素材で1番好きなのはA4のコピー用紙です。普通のコピー用紙だとけっこう青みがかっているんですけど、この中性紙が私は気に入っています。使っている画材との相性もいいんですよね。
求め続けた結果でもある
デザインの専門学校を卒業後、線やかたちにまつわる表現を独学で始めたMIKAMIさん。当初は髪型をモチーフにしたものが中心であったのに対し、最近ではコンセプトを設けない作品も多く発表している。作風や内面的な部分の変化とともに、これまで向き合い続けてきた“描くこと”について。
MIKAMIさん
デザインの学校を卒業したあとは、学んだスキルを活かすというよりも、自分なりに描いてみたいと思って絵の制作を始めました。今のような黒1色で描くというスタイルとは違って、色をたくさん使って描いたものが多いです。それが、あるときから全然描けなくなってしまって。制作からはいったん離れて、しばらくの間は別の仕事をしていました。
今のような活動を始めたのは10年ぐらい前です。30代半ばぐらいのときに、「このままじゃだめだ、自分のやりたいことをやろう」と思って、また描き始めました。アーティストとしての活動を始めたものの、どうしようかと考えていたところ、職場の人がInstagramを教えてくれて、SNSで発信するようになりました。人とつながることも大事だと思って、話すことが苦手なのに人が集まる場所にたくさん行ったり、気になった展示にはできるだけ足を運んだりしながら、当時はがむしゃらに動いていたような気がします。
初期の作品のモチーフに髪型を選んだのは、造形としての興味からです。文字のモチーフについては、私の中では読めるかどうかよりも、その文字を構成する線が美しいかどうかに重きを置いて描いています。文字のように見える作品もあくまで線の表現として文字のように描いているだけで意味は全くありません。そういう視点では、自分には今の作風が1番合っている感覚があります。
届く香り、
感じるかたち
“香り”とMIKAMIさんの“線”に共通しているのは、いずれも直感的で感覚でとらえるものであるということ。今回のコラボレーションは、3つの香りにちなんだ『オードパルファム エクスペリエンスセット(限定版)』の特別版パッケージアート(※公式オンラインショップは好評につき完売いたしました)と、3種類それぞれの香りの店頭用ムエットにMIKAMIさんによるアートを制作していただくというもの。五感に作用するアートとは、どのように生まれるのだろう。
MIKAMIさん
今回のワイルドローズコレクションって、実際にお客さまが香りを選ぶときも、まずは感覚でとらえた香りを選んでいただけたらっていうものですよね。なので私も、この香りはこういう線、みたいに意識して描くこともしていません。それぞれの香りを感じながら自由にたくさんの線を描きました。描いた中から、そのときいいなと感じた線をいくつか選んで切り取り、コラージュによって再構築して1枚の作品を仕上げました。
作業の流れとしては、1枚の紙に描いたものの中から「いい線」を切り抜いて、別の紙に貼っています。描いたものをバラバラにして再構築して、ひとつのものにしているんです。考えないで描くので「よくない線」っていうのもあって、それを見極めるのも大切な作業です。コラージュするときも、こうやって貼ろうっていうのがない段階で線を選んで、紙の中で線同士をあてがいながら、余白のバランスを見て最終的に貼るっていうつくり方をしました。
展示のときもそうなんですけど、作品単体ではなく空間全体のバランスも大事にしているので、今回は3つのムエットを並べたときの配置にもこだわりました。作品自体には、コンセプトやメッセージ性といったものはないんですけど、自分が意識していることを見て、そこの部分を言葉にしなくとも感じ取ってもらえるなら、それはすごくうれしいことです。
Text_Haruka Inoue
桑沢デザイン研究所夜間部デザイン専攻科ビジュアルデザインコース卒業。線と形を表現の対象として、ドローイングや コラージュ、シルクスクリーンなどで作品を制作。モチーフに意味を持たせず、純粋に線と形、余白やバランスを重視して、独自の世界観を表現。
Instagram| @shortbangs
HP|https://yukimikami.theblog.me/
No.5、No.18、No.9の中で
お好きな香り1つを
抽選で3名様にプレゼント。
2023年4月19日(水)〜5月7日(日)まで
→こちらは終了しております。
【参加方法】
- 1.Instagramアカウント(@OSAJI__)をフォロー
- 2.キャンペーン投稿にいいね
- 3.好きな香りのNoと感想をコメント
EAU DE PARFUM
“Wild Rose” Collection No.5 / No.18 / No.9
各50mL ¥17,600(税込)
2023.3.31(金)発売