Lee Izumidaさん
絵を描くベースとなる場所は、自宅の一角に構えたアトリエスペース。音楽をかける日もあれば無音の中で無心で描き続けることも。描くことにルールやルーティンはなく、自分の気持ちの赴くままに筆を進める。
Lee Izumidaさん(以下、Leeさん)
最近は出張が多いので、アトリエだけでなく、キャンバス代わりに半紙を持ち歩いて、行く先々でも描いています。旅先で見たものを見たままに描いてみたり、どこでも描いています。プライベートの旅行も含めて、国内外問わず行ったことのない場所を訪れるのは好きですね。
絵を描くことは私にとって、好きを通り越してもうクセみたいなもので。小さい時からずーっと描きつづけています。北海道の田舎町で、同級生がひとりもいない環境で育ったので、誰かと比較することもなく、他の遊びや誘惑もなく。その時のまま、その延長で今に繋がっている感覚なので、絵描きを生業にしている今でも、仕事以外の時間でもずっと描いています。
だから、みんなが思うほど、絵を描くことを難しく捉えてないし、逆にいうと、ビジネスライクに割り切って描くことは苦手。描きたいと思った絵を素直に届けていきたいというのが本音です。
中学卒業後、アメリカへ渡りコミュニティカレッジでデッサンなど美術の基礎を軽く学んだLeeさん。帰国し、アパレルの販売員として働きながら、友人のカフェを借りて個展を催し、発信を続けた。自分がいま伝えたいメッセージを発信する場所としての個展は、現在も変わらず、Leeさんのライフワークであり仕事の軸となっている。
Leeさん
日々、頭に思い浮かぶものを、言葉にして、わーっと描き溜めていくんです。そこから、今回の個展はこんなテーマでいこうとか、大きなフレームが決まっていきます。
歳を重ねていくことや、環境の変化、季節や過ごしている空間によって、描きたいこととか絵のテイストとか、そういうものも日々変わっていくんですよね。例えば、コロナ禍で自粛ムードだった頃は、すごくカラフルに描いていたり。そうかと思えば突然シンプルに表現したくなったり、ごちゃごちゃしたテイストが気分の時も。
たまに、あの時のあの絵のタッチで描いて欲しい!とリクエストをもらうこともあるのですが、そこまで器用ではないので、すごく難しいんですよね。いまの私の絵や気分は、その当時ともう違っていたりするので。
いま伝えたい想いを絵で表現し発信する場として、個展は私の絵を描き続ける人生になくてはならないものです。
引く手あまたの人気作家となった今でも、等身大の自分であることを崩さない。自分の置かれた状況を客観的に捉えつつも、自らの心の動きに率直に筆を動かすバランス感覚、濁りのない表現力に、多くの人が魅了される。
Leeさん
ありがたいことに、いまはたくさんお仕事をいただいていますが、絵だけで生活ができるようになったのは、ほんの4〜5年前のこと。それまでは他の仕事もして生計を立てていたけれど、だからといってアーティストであることを諦めてはいなくて、ずっと細々と描き続けていました。とにかく辞めずに、でも、絵を描くことが嫌いにならないように、自分のペースで続けてきたことが、今に繋がっているのかなと思います。
いま売れなくてもいいから、いま私が描きたいものを描く。ゆくゆく、それを見て、みんなが“いいね”と思ってくれたら、それで良いのかなと。
たとえばこれから、お仕事の波が緩やかになることがあっても、描けるところで描き続ければ良いし。そもそも、求められる型に自分をはめていけるほど、器用にできるタイプではなくて。どっかで苦しくなっちゃう。これからも、「絵を描くことを嫌いになることはしない」という信念からは逸れずに、正直にやっていきたいなと思っています。
Ryo〈リョウ〉シリーズに描かれたのは、陽射しを浴びてきらめく、艶やかなレモン。無機質になりがちなバスルームに、パッと心が晴れるような彩りを与えてくれる。Leeさんが実際に製品を手にとって感じた、香りや使用感のインスピレーションがダイレクトに表現されている。
Leeさん
Ryo〈リョウ〉シリーズを実際に使わせていただいた時に感じた、「モヤモヤしたものがスーッと晴れるような爽やかさ」をダイレクトに表現したくて、レモンを描こう!と決めました。蒸し暑くなる初夏に、視界に入っても涼しげで、自然と手に取りたくなるような絵を。
私はラフの段階ではあまりイメージを固めないことがほとんどで、あまり綿密に計算せず、描きながらチューニングしていくことが多いです。今回は、ローズマリーやミントも入れる?とか、レモンの断面図をみせる?とか逡巡しながらも、キャッチーで率直に伝わる表現を選びました。
1年後にまたレモンを描いてと言われたら、全然違うレモンかもしれないし、一緒かもしれない。いまの私が描きたい、届けたいレモン。そんなフレッシュなムードも感じ取っていただけたら嬉しいです。
バスルームにアートを飾るようなイメージで、出来上がった絵を4分割に。それぞれのボトルへ名入れをして息を吹き込みました。ボトルタイプの4製品を揃えると1枚の絵に。セットでギフトにした時にも絵が繋がっていると楽しいかなとか、そんなことも考えながら。
すっきりした香りや使用感、デザイン的にも、年齢や性別を問わず手にとりやすいアイテムだと思うので、大切な人へのギフトやシェアコスメとしてもぜひ。たくさんの人に楽しんでいただけますように。
Text_Ayumi Oguma